泉鏡花さん:夜叉ヶ池 

2017, 03. 20 (Mon) 00:22

20年近く前にはまった鏡花さん。

代表作の高野聖も面白いけど、自分的にはこの夜叉ヶ池のが好き。
シェイクスピアみたいな、戯曲形式になってる。

どんなお話か。

主人公は旅の坊さんで、人探しの旅をしてる。
探し人は、民話収集の旅に出たまま消息不明になった。

主人公は、立ち寄った村で、村人の女性に事情を話す。
そしたら、その女性の旦那さんが探し人だと判明する。
探し人と再会して、いきさつを聞く。

この土地にある夜叉ヶ池に、龍の神様が住んでる。
この龍の神様が夜叉ヶ池から離れると、池の水が溢れて洪水になる。
昔はよく洪水が起きてた。
で、ある坊さんが龍の神様に、毎日鐘を突く事を約束して、その代わりに夜叉ヶ池から離れないようお願いした。
以降、この村では、毎日鐘を突く伝統がある。
なんだけど、最近、鐘を突いてる坊さんが亡くなった。
誰も鐘を突かなくなりそうだったので、この探し人が後を継いで鐘を突く事にした。
で、村人の女性と結婚した、と。

その頃、村では日照りが続いてた。
で、村人や神主が打ち合わせして、夜叉ヶ池の龍の神様に生贄を出す事に決まった。
この生贄として、探し人の嫁さんが選ばれる。
主人公と探し人が家を空けた隙に、嫁さんが村人に連れてかれる。
嫁さんは、生贄にされる前に自殺する。
その後、探し人も、二度と鐘を突けないよう細工してから自殺する。
鐘を突く約束が無効になったと悟った龍の神様(メス)は、夜叉ヶ池から出て彼氏に会いに行く。笑
夜叉ヶ池の水が溢れて村を飲み込んでおしまい。

ちょっと今の日本だと結末がタブーな気はするけど、まぁでも民話とかってこんなの沢山あるもんね。

泉鏡花さんの文章は、現代人からすると、かなり取っ付き辛い。
とはいえ、古文とかじゃないし、特に何か勉強し直したりしなくても、ある程度読んでるうちに文体に慣れてくる。
慣れてくると、文体と話の進行がピタッと一致する感覚を得られるようになって、むしろこの文体じゃないと読みたくないと思うようになる。
絵や音楽と同様、小説も情景に応じた書法がはっきりと存在するんだな、と思った。

鏡花さんの小説や戯曲は、どれも墨で描いた絵みたいなモノクロの世界を浮かべやすいんだけど、この戯曲に限っては、シャガールさんの青い絵が浮かぶ。

これとか。


あと、これとか。エッフェル塔みたいなの立ってるけど。笑



- 完 -
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坂口安吾さん:夜長姫と耳男 

2017, 03. 12 (Sun) 00:49

「桜の森の満開の下」って短編集に入ってる。
昔、友達の薦めで読んだ。
かなり強烈だった。

どんなお話か。
主人公は飛騨の名匠の弟子で、偉い長者様の依頼で、仏像を作りにお屋敷へ出向く。
長者様のお屋敷には、他にも名匠が集まってて、それぞれ敷地内に工房を与えられて、期日までに仏像を作る事になってる。
で、一番出来の良い仏像が、長者様の娘の夜長姫の誕生日プレゼントになる予定。
夜長姫は朗らかで残虐な性格をしてて、主人公は姫の従者の女の子とひと悶着あった際に、姫の誘導に嵌って、従者の子に耳をちょん切られる。
従者の子は自殺する。
ブチ切れた主人公は、呪いの仏像を作る為に、毎日蛇を沢山捕まえて首ちょんぱして仏像に蛇の血を掛ける。
余った血は主人公が飲む。
蛇の死骸は自分の工房内の天井に吊るす。
そうやって完成した仏像は、他のどの職人の物よりも高く評価されて姫に献上される。
仏像を見た姫はご満悦で、工房を見せて欲しいと言う。
工房に来た姫は、天井に吊るされた大量の蛇を見ながら、仏像の工程を事細かく尋ねる。
で、主人公の真似をして蛇の血を飲む。
そんな事をしてるうちに、長者様の領内の農民達が疫病でパタパタ倒れ始める。
それを見た姫は、あぁみんな畑でキリキリ舞いして倒れてく、とご満悦。
主人公は、絶対姫が農民に呪いを掛けてるよ( ;´Д`)と考えてビビる。←お前の呪いのパワーを受け止められたんだから、お前のせいだろ。笑
で、姫を刺殺する。
姫は、それで良いんだ、好きな相手は呪うか殺すか争うかしないとね、と笑顔で事切れる。
主人公が失神しておしまい。

…激しすぎる上に、あらすじと文体に若干、青臭さも感じはするけど、描写(安易な形容詞を控えるとか)や文脈の繋ぎが騒がしくなくて、淀みなく流れるので、話中にかなり引っ張り込まれる。
今まで読んだ小説の中でも、かなりインパクトがあった。

この話が収録されてる「桜の森の満開の下」って短編集の中だと、タイトルにもなってる「桜の森の満開の下」と「紫大納言」もかなりお薦め。
特に「桜の森の満開の下」は、この「夜長姫と耳男」を洗練させたような作品で、歌舞伎とかの舞台でもよく使われてる。




…らしいよ( ;´Д`)


- 完 -

夢野久作さん:ドグラ・マグラ 

2017, 03. 02 (Thu) 20:08

24の時に付き合ってた彼女に古本屋でおねだりされて買った思い出の小説。笑
かなり昔に出版された中古のハードカバーで、めっちゃ高かった( ;´Д`)
この彼女には、おデートが目黒の寄生虫博物館だった上に、寄生虫を見た後でうどんかソーメン食べようね、とか提案されたり、激しい思い出が多い。
そして振られた何年後かに、自分でも読みたくなって文庫版を買った。

どんなお話か。
精神病棟で目が覚めた記憶喪失の主人公に、若林博士がこれまでの出来事を話す。
主人公は、正木博士っていうマッドサイエンティストみたいな人から心理実験を施された結果、殺人を犯したらしい。
正木博士は前月に自殺した。
で、その同僚の若林博士の説明に耳を傾ける。
でも、聞いてるうちに、自分が話中のどの登場人物なのか分からなくなる。

…ざっとこんな感じ。
あらすじを説明するのが難しい( ;´Д`)
しかも、間違えてるかも知れない。

作者はこれ書いた1年後くらいに死んじゃった事もあってか、読むと気が狂う奇書、なんて有名なキャッチコピーがついてる。
文体も、不安と恐怖に支配されてる主人公の思考回路を追体験するように書かれてる。
1人称の語り手の主人公と、話中に出てくる正木博士や、殺人犯の呉一郎と同一人物に見えてきたりして、語り手の正体が定まらない。
時間の進みも分からなくなる。
これがこの小説の最大の面白ポイントだと思う。

あと、話中で、正木博士が書いた「胎児の夢」って論文の中身が丸ごと、超長々と出て来る。
これが強烈。
内容自体は、人は胎児の時に夢の中で、原始生物が人間に進化するまでの過程をトレースする、みたいなエセ科学的なものなんだけど、かなり具体的な書き方をしてるので、陳腐さを感じないで読める。
「本当に私達は脳髄で思考しているのか」って考察というか提起は、この小説の世界を読み解く上でとても示唆的。
あと、変な催眠術的な歌が出てくる。笑

この本の影響をもろに受けてる漫画家さんもちらほら。
キャッチコピーは若干寒いけど、実際は相当にのめり込んで読んだとしても、さすがにこれで気が狂う人はそんなにいないと思う。
でも、行間レベルで共鳴しちゃうと、お花畑の残像が…( ;´Д`)はぅぁ

長い割にはストレス無く読みやすい文章だし、かなりお薦め。


- 完 -

カフカさん:判決 

2017, 02. 19 (Sun) 00:50

近代小説の面白さを知る切っ掛けになった短編。

審判とか訴訟って呼ばれてる有名な長編があって、それと和訳のタイトルが似てるけど、それとは別作品。
こっちは岩波文庫の短編集に乗ってる小品。

代表作のひとつと言われる変身よりも、個人的にはこっちのが面白いと思う。

いきなり話が逸れるけど、発言小町で、カフカの変身をネタにした釣り質問があって、めっちゃ釣られてる。笑
http://komachi.yomiuri.co.jp/t/2012/0519/508637.htm


…本題に戻します( ;´Д`)

高2の時に、急に活字を読みたくなって、本屋でカフカ短編集を見つけて、立ち読みした。
作者名が面白いって思ったんだよね。

第1話は、掟の門って作品。
おぉこれは面白い、と引き込まれてそのまま読み進めた。
第2話が判決で、これがかなり衝撃的だった。
その時、1000円くらいしか持ってなくてバイト代が出るのも先だったんだけど、迷わず買った。
以来、何度も読み返してる。

どんなお話か。
商売人の主人公が、寝たきり病人のパパんと会話してる。
そしたら、パパんが怒り狂って力強く立ち上がる。←元気じゃねーか
で、「自分の他にも世界がある事を思い知ったかコノヤロー。おまえに死を命じる、溺れ死ね!」ってパパんに言われて、橋からダイブする。笑
必然性とか辻褄合わせみたいな文章は皆無。笑

は?何これ?( ;´Д`)って感じの荒唐無稽なあらすじなんだけど、読んでる間は、特に破綻してる感じはないんだよね。
しかも、普通に感動したんだよね。
で、後々、思い出してみると、訳の分からない話だし、何で感動したのか自分でも理解できなかった。笑
でも、読み返すとやっぱり文章に心を惹き付けられる。

描写が素晴らしいと、相当に変てこな話でも、読み手は心を奪われる物なんだな、と思った。
ストーリーとか、共感とか、そういう要素と別次元のところにも、強い感動要素ってのがあるんだと知った。
まぁ、そうじゃなきゃ、美術にせよ音楽にせよ映画にせよ、現代芸術なんて発展してないだろうしね。

自分としては、悪い夢を見てる最中の脳みその反応を文章化してる、という理解が1番しっくり来る。
理不尽な疾走感や拘束感というか、文の重なり方に本能を刺激する物を感じた。
英訳版も読んでみたけど、同じ心理反応が得られた。

でも、それだって恣意的で狭い解釈だよなー、とも思う。

この作者は、ユダヤ人の境遇を象徴するような話を書いてる、とか予見的だ、という解説が結構多い。
分類として分かりやすいもんね。
一方、そういう要素は副産物に過ぎない、っていう説明をして、もっと踏み込んだ具体的な解析をしてる批評家も少なからずいる。
色々読んでみたけど、フランスのジル・ドゥルーズっておっさんの解説が自分には1番、本質的に思えた。
めちゃめちゃ掻い摘むと、このカフカって人は、母国語じゃない言葉(マイナー言語って言い方してる)で、その異物感を処理せず受け入れたまま小説を書いてる、と。
で、言葉の動的な側面を最大限に活かす事を優先して筆を進めた結果、ああいう作品群が出来上がったんだよ、と。

ドゥルーズさんの批評を読むと、シチュエーションはちょっとズレるんだけど、スチングさんのこの歌が浮かぶ。
https://youtu.be/d27gTrPPAyk

小説って面白いんだな、と思う切っ掛けになった。


- 完 -