哀しい物語 

2015, 10. 09 (Fri) 20:20

むかしむかし、とあるお方が旅に出たところ、早速、山道で遭難しました。

歩けども歩けども、人里への方角の見当がつきません。
周りは少しずつ暗くなってゆき、何だかずっと同じところをぐるぐるぐるりと歩き回っているような気がしてきます。

やがて両脚の力が抜け、座り込んだまま動けなくなってしまいました。

大きな木の根元に背を凭れていると、心細さに押し潰されそうになりました。
お腹も空いてきました。

腰を下ろしたあたりにはキノコがたくさん生えています。
試しに一本、毟ってみました。
あら、美味しそう。

しかし、実際に食べるにはとても勇気がいります。
大体どんなキノコだか分かったものではありません。
こんな疲労と絶望にのしかかられた状態で、もし中毒にでもなってしまったら、そのままのたれ死んで、それこそ、そのうち自分がキノコになってしまいそうです。

「キノコは余のイチモツだけで十分じゃ!」

もはや自分が握っているのがキノコなのか、イチモツなのかさえよく分かりませんでした。
確かなのは、どちらであろうが大層気持ちが良いという事です。



いわゆる「疲れマラ」という現象は、生命の危機に瀕した際に勃ち上がる防衛本能だ、という大層ロマンチックな説があります。
私はそんなもの信じてませんが。
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